NEWS

現場力インタビューVol.12 「個別盛り廃止で、材料費・燃料費の削減」 現場力作成者:大分市内の小学校の給食現場 朝来野 久子さん

ソシオークグループの「現場力」とは
「現場力」とは、フードサービスや子育て支援、運行管理・移動サービスなど現場ではたらくソシオークグループの社員が自ら課題や改善点を見つけ、知恵と工夫によりチームで改善を重ねていく取り組みです。自ら考え実践するナレッジワーカーとしての誇りの醸成や、個人の持続的成長につながるとともに、各現場の意欲向上や組織の活性化にもつながっています。

 

今回ご紹介する現場力は、学校給食現場でアルミカップを使った個別の盛り付けを廃止し、鉄板に盛り付けることで、業務をより効率的に・安全にできるようになり、時間や経費、アルミのゴミ削減や食品ロス削減など様々な効果を生んだ画期的な取り組みです。
作成者の朝来野 久子さんは、学校給食調理員として37年の経験をもつ大ベテラン。現場のみんながケガをせず長く働くことが大切だと語る朝来野さんに、詳しくお話を伺いました。

 

――今回の現場力はオーブンを使用する献立でアルミカップの使用を廃止するという内容ですが、発想のきっかけは何でしょうか。

簡単に言えば、時間がかかりすぎていたということですね。アルミカップを鉄板に並べて焼くんですけれども、鉄板の枚数も限られていて、何度も繰り返し使わないといけない。最初の分が焼き上がったら、熱い状態のうちに全て降ろして、また同じ鉄板に次のカップを並べて盛り付けをして焼いていかなくてはいけない。

しかも、うちの厨房の場合、焼きムラができるのを防ぐために、オーブンで焼いている途中で鉄板を上下・前後と入れ替えないといけないんですよ。それがまた、火傷しないように気を付けながらやるのでね、慣れた人しかできない、誰でもできるとは言えない状態だったんです。それだけ大変な思いをして作っても、「おいしくできているけど、手間と安全面の割に合わないな」って感じていました。

他にも、アルミカップのゴミの問題がありました。私が市役所の学校給食調理員として働いていた頃、市内でも学校給食のゴミをなくすためにアルミの使用をなくそうっていう動きがあったので。

 

――実際に盛り付けを鉄板に変更したときのことを教えてください。

私から学校の栄養士先生に「アルミカップで一人一人の分を個別に盛り付けるのをやめて、鉄板1枚の上に1クラス分を盛り付けて焼くのはどうですかね」って提案したんです。そうしたら、栄養士先生は「ああ、そういう方法もあるね!」って言ってくれたんですよ。

栄養士先生にこのことをお伝えすると、クラスごとに配缶するのにちょうど良いサイズの鉄板を新しく購入してくださいました。クラス数分の鉄板を頂いたので、前みたいに使い回しをする必要がなくなりました。

 

――所要時間・経費削減にもつながったとのことですが、どのくらい削減できましたか?

まず時間のこと。カップを使っていたときは、盛り付け、オーブンで鉄板を出し入れ、配缶するまでに60分。加えて、焼き上がったものの数が必要な食数分あるか確認するのに30分かかっていました。

それがカップをやめて鉄板に盛り付けるようになってからは、盛り付け・鉄板の出し入れに30分、配缶するのに30分でできるようになり、以前より30分短縮できたんです。

それだけでなく、盛り付けに必要な人員まで1名分減らせたんです。カップの献立の日は盛り付けから配缶までに時間や手間が必要で、調理員が5名必要だったので、通常のシフトより人員を1名多く配置しなくてはなりませんでした。

でもカップをやめてからは4名でできるようになったので、パートナーさんがシフトに休みを入れやすくなり、とても喜んでいます。

経費も大きく削減できました。以前は1枚8円くらいのアルミカップを1回の献立で510枚くらい使っていたから1回分で4,000円以上、カップの献立は年間で大体10回くらいなので、年間だと 8×510×10=40,000(円)の削減になったんです。このことを栄養士先生に話したら、とても喜んでくれました。

 

――残食の削減にもなったとのことですが、詳しく教えていただけますか?

アルミカップを使っていたときは、アルミのゴミが出てしまうというだけでなく、カップの内側にどうしても食材がこびりついてしまって、それが食品ロスになってしまうなと。鉄板に盛り付けるようにしてからは、食材がこびりついてロスになることはなく、残食も少ないし、子どもたちも喜んで食べてくれていると思います。

 

――パートナーさんたちの反応はいかがでしたか?

パートナーのみなさんも作業がやりやすくなったと仰ってくださいました。以前はオーブンの出し入れなど慣れている人じゃなきゃできなかったんですけど、今は小柄な私にもできます。

――この現場力は、作業工程を減らすところから始まって、業務時間短縮や経費削減、ゴミ減量など様々な効果が得られたものなのですね。このような現場力の取り組みにあたり、朝来野さんが普段から大切にしていることは何ですか?

今回の現場力にも通じることですが、やっぱり働きやすい職場が一番ですよね。そのために毎朝みんなに言っているんですが、まずケガをしないこと、安全に働けること、基本に忠実に清潔な作業をすることがとても大切だと思うんですよ。

あと、みんなが長く働いてくれること。私も長年学校給食で働いてきて、先輩から色んなことを学んで、それを自分で消化しながら次の人に教えてきたので。そうすることで、みんなの技術って上がるんですよね。

ここの現場のパートナーさんたちは、みんな明るくて良い人ばかりで、オープンから1年以上経っているんですが1人も辞めずに続いているので、本当に良いことだと思うんです。私が新しいことについて話すときも、みなさん積極的に素直に聞いてくれて、しっかり基本に忠実に正しく、真面目に丁寧に仕事を覚えてくれますね。

 

――最後に、現場力について朝来野さんが一番大事に思っていることは何ですか。

未経験の方や、その現場で新しく働くことになった人が、うまく受け入れられることが一番なのかな、と思います。パートナーさんたちがこの前、現場力について、「5Sって大事やね」という話をしてたんですよ。みんな、きっちり真面目に前向きに取り組んでくれるんだな、と思いました。やっぱりみんなで信用される仕事をするのが一番ですよね。